離職率が高くなったらけっこうダイナミックな変化が起こるかも。

http://d.hatena.ne.jp/higayasuo/20080702/1214995190
これについて思ったことを書きますよ。

そもそも離職率が高いことは悪いことだと一般企業が考えている理由

ひがさんのblogの例にあるアクセンチュアのような有名企業と、一般的な中小SIerやソフトウェアハウスとは、まるっきり条件が違ってくると思います。

今でこそアクセンチュアは業務拡大のため徹底した求人募集広告攻勢をかけています(@ITとかでよく見ます)が、普段は、あそこまで有名な企業ならばお金かけなくても優秀な人材は集まります。特に新卒の確保には困っていないでしょう? 最近は分かりませんが。

一般的な中小企業では、そうはいきません。みんな人材の確保に困っています。自社のHPから応募があれば一番良いのですがそうはいかないので、人材紹介(エージェント)を使ったり、求人媒体に広告を出稿したりします。ライターに依頼して、会社の特設ページを作ってもらって、一生懸命会社のPRをします。

そうした広告費を、採用者の人数で割ったものを採用単価なんて言ったりしますが、IT業界だと大体70万〜200万くらいではないでしょうか。

そこまでして獲得した人材が離職するのは、企業にとっては大きな損失です。特に、未経験の新人が、やっとコーディングがバリバリできるようになったあたりで「俺もっとできるから大きな会社いくのねーん」とか言って辞めるのはとても痛い。や、技術者が大きく羽ばたくのは素晴らしいことです。それは分かるけども(そして僕も3年で一つ目の会社を辞めたクチだけども)、「ちょ、お前にかけた採用単価200万と、教育費3ヶ月分の給料分、せめて稼いでから……」とか正直思ってしまう経営者が多いのは致し方ない気がします。

したがって一般的には、離職率が高いのは悪だとされているわけで、それを防ぐために企業は「満足度を得られる仕事の開拓」や「みんな仲良く楽しい職場作り」や「大きなミッションを掲げてやりがいの創造」やひどいところでは「仕事をわざと難しく見せてスキルトランスの牛歩戦術」のようなことをするわけです。

まとめると、離職率の高さが悪だと考えられている主な理由は、獲得単価と教育コストの回収が遅れることです。
まあ、他にも組織力(笑)が下がる、とか、いろいろあるけれど、経営者が一番本気で恐れているのはコストであることは間違いないのではないでしょうか。

離職が悪でなくなり、みんな自由に移動するようになると

「俺IT向いてない」とドロップアウトする人はまあ今回は置いておいて、「出来るからもっと上へ」とものすごいポテンシャルを持って駆け上がっていく人がたくさん生まれることを考えてみましょう。
彼らはプロジェクトからプロジェクトを渡り歩き、最終的には、「魅力的」で「技術的トピック」がたくさんある仕事を供給できる会社やその周辺にまとまっていくと思います。

これってホント日本のIT業界に欠けているところで、こういう会社集団、イケてる技術者集団みたいなのがもっとボコボコ生まれて欲しいですね。そしてこういうところから、新しい技術要素が生まれていくようになったら、日本やったな! とか思います。僕もできるだけその場所に近づけるようにがんばりたいです。

この相変化に伴って起こる変化を予想してみた

先も言ったように、離職が悪と考えられている理由は、獲得単価と教育コストです。
離職が正義になったとき、企業はここにお金をかけられなくなります。
その結果、中小の採用はとても慎重になると思います。
「こいつは今後辞めるのかどうなのか」みたいなところを、今以上に厳しく見るようになると思います。
下手すると誓約書みたいのを書かせる企業が出てくるかもしれない。
結果、中小の採用人数が減ると思います。日本のほとんどの企業が中小ですから、結果、IT業界の人口は減ると思います。

ただまあ、僕としては、ここで技術で一花咲かせる中小を見てみたいですね。
一発何かで当てて、自社サイトだけで優秀な人材獲得が出来るようになれば、獲得単価ゼロですから。
難しいですけど、これがIT企業の有るべき姿かな、と。
このインターネット隆盛の時代に、企業の魅力でエンジニア一人集められない会社なんて解散してしまえ! とか、ちょっと思う。
#まあでもじゃあ外へ魅力が伝わりづらい企業が社会的に要らない企業なのかっていうとそういうわけではないので、難しいところ。

一番の問題は教育ですかね

発展する業界というのは、良い人材を外からも獲得しなければならないと思います。特に労働人口が減る昨今は。
今活躍している技術者で、もともと別の業界に居た人も数多く居ると思います。
で、今、誰がその教育をやっているかと言うと、中小企業だと思うんです。
だって、大企業で「未経験OK★ミ」なんてこと書いてあるの見たことない。
で、離職率が高くなると、誰も教育をやりたがらないと思うんですね。

これって、業界にとってあんまり良い傾向では無いな。
できれば、業界未経験者への教育は大手が業界のためにやって欲しいところだけど、まあ、そんな法律でも出来ない限り難しいだろうなー。

そして業界は二極化する

人をつなぎとめる魅力のないSIerからはどんどんエンジニアが流出します。そして先の理由により中途の採用や教育は出来ないので人は増えない。
最悪、コアで開発できる人が居なくなるため、中小の作業形態としてはロースキルの技術者派遣しか残らなくなる。

結果、良いエンジニアがひっきりなしに入っては出ていく企業と、派遣しかこなす能力の無くなった零細SIer(とそれにぶら下がる技術者)に、今以上に二極化するとおもいます。
けっこう潰れる企業増えるんじゃないかな。
まあ、僕はいいことだと思いますよ。何の魅力もない中堅零細SIer、ひいてはしょうもない多重請負構造を壊すのはこれかも! とかちょっと思う。


まあ、極論を書いた気がするけど。こんなことを考えましたよ。